過ぎる日もまた 4









カカシはようやく里へ帰った。


元々精悍だった顔が更に引き締まっていることが、長すぎる過ぎた時間を物語っている。冬を過ぎ、桜の季節が巡ってきた頃だった。
早朝、里に入ってすぐに火影の元へ赴き、長い報告をし終えてカカシはようやく息をついた。

だがすぐに踵を返しイルカの処へ急ぐ。この時間ならまだアカデミーではなく家に居るはずだ。
カカシの気が逸る。早くイルカに会いたい、声が聞きたい。イルカのために戻ってきたのだから。

しかし二人で過ごしたあの部屋にイルカの痕跡はなかった。
わずかに自分の、どうでもいいような持ち物が残されているだけ。

「イルカ先生…一体どこへ行ったんだ?」



再度自分のもとへ赴いたカカシに、火影は多くを語らなかった。
曰くイルカは任務で里を離れた、と。

「あの人はいったい何の任務で何処へ行ったんです? 俺は四年もかかってやっと帰って来たんですけどね?」
「そうそう任務内容は漏らせるわけないだろう」
「俺たちをわざわざ引き離しておいてその扱いですか」
「わざとじゃないさ。だが、それも任務だ。忍なら当たり前の事だろう?」
「忍に人権ってのはない訳ですかね。だいたいイルカ先生は教員でしょう? 長期で休職させるなんてヒドすぎます!」

次第に刺々しくなっていくカカシを呆れたような目で見遣り、追い払うような仕草をして火影は言った。

「そんなに知りたかったら、自分で調べるんだな」
「くそっ、相手が火影様でも何かあったら容赦しませんよっ!」




扉を叩きつけるようにして出て行ったカカシを見ていた綱手は、脇にいたシズネを見上げて言う。

「血相変えて飛んできたね。そこまで執着してるとも思わなかったが」
「イルカさん以外は何も見えてない、って感じでしたね」
シズネも呆気にとられたような顔のまま答えた。
「小さい頃からまったく可愛げのないガキだったけど、あーいうトコだけは四代目が仕込んでいったみたいだねェ。あいつにイルカは勿体無いと思ってたんだけど…。まあ、イルカがどうするか、な」
「そうですね…。あんな風になるなんて思ってませんでしたし」
「カカシの、大事なものを手放さない根性だけは認めてやろうかね」




暗にイルカから口止めしているような言い方をされて、カカシは益々苛立っていた。
自分も任務で何年もの間イルカに何の連絡もしなかったが、彼の人が何の伝言もなく里を離れるとは信じ難かった。
ましてやその存在を消してまでとは。

誰かに伝えてはいないだろうか。




だってあの日。

「待っているから」と。

あなたは言ってくれたでしょう?

それだけを頼りに。

頼りに、俺は。







とりあえず情報をとアカデミーに現れたカカシは、中庭でサクラを見つけて声をかけた。年齢なりに大人びたサクラだが見間違わない。
「ああ、サクラか。随分大きくなったもんだね」
だが、目を細めるカカシを見て顔色を失うサクラを、その勘は見逃さなかった。

「ねぇ。イルカ先生は?どこに行ったかお前知ってるんでしょ?」
「任務で…。私達にも行き先は知らされていません」
両手を握り締めながら言うサクラに不振を抱き、なおも詰め寄る。

「サクラ。お前は何を知ってる?なにか隠してるだろう?」
カカシから漏れ出る殺気にサクラの身体が硬直する。その肩をぐっと掴んで、箍が外れたように揺すった。
イルカの事しか考えられなくなっていたカカシは片手を上げる。

「覗かせてもらうよ」

額宛をずらし写輪眼を剥き出しにしてサクラを見つめる。
ヒュッとサクラの喉が鳴った。


 ―だめ、見ちゃ駄目だよセンセイ!


だがカカシは見てしまった。女といるイルカを。
それが一体自分にとって何を表すのか。


イルカは自分を待たなかった?
女なんかと一緒になって、幸せに?
知られるのがイヤで俺から隠れたのか?
待ってるっていったくせに?


怒りを膨らませたカカシにサクラが小さく悲鳴を上げる。
「…せんせっ、痛い…」

サクラの肩を掴んだまま動かないでいるカカシを、飛び込んできた大きな手が引き剥がした。

「馬鹿野郎!教え子相手になに物騒なことしてやがる!」

アスマに揺さぶられて我に返ったカカシはその場に座り込んでしまった。
サクラは真っ青な顔で立ち竦んでいる。アスマが行けと促すと、振り返りながらもその場を離れて行った。




「知りたいか」

そう言ってアスマはカカシを見下ろした。





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み、短い…。
そしてアスマはいつも貧乏くじ…。


(2004.02.21)






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