「俺は、アンタの…、イルカのことが好きなんだよ…」

強い意志を感じさせる眼が、自分の眼を射抜いている。再び唇が合わされ、カカシはそのままイルカの開いた唇から舌を差し入れて、ゆっくりと口腔を探り始めた。
「ん、んんッ…」
嘘だと疑う自分と、与えられる感触を追い始める自分がせめぎ合い、イルカの意識を一層混乱させていく。
それでも確実に身体は情欲の火種を拾い上げ、思わず瞼を閉じるとカカシの動きが大胆になっていった。
舌先を吸い上げられ、貪るような動きの苦しさにその身体を剥がそうとするが、仰け反った分だけ抱え込まれて床に縺れ込んでしまう。

奪われつつあるイルカの思考の中で、ぐるぐると巡る思い。

あのカカシが。
自分をあれほど嫌っていた筈の男が。

それは自分にとって信じられない、驚きの行動だった。カカシの体の下に敷き込まれ、首筋に軽く歯を立てられながら、イルカは自分が欲情していることに気がついた。上擦った声が出る。
「俺、も…」
カカシの動きが一瞬止まり、黒い瞳を凝視してから再び忙しなく動きだした。
ベストを肌蹴られ、アンダーの上から胸のしこりを指で弄られて、思わず喉が鳴る。
「…やッ…」
一瞬正気に返ってその手を外そうととしたが、カカシはびくともしない。
「だめ。止まらない…」
動き回る指に唇を噛みしめたものの、耳元で囁かれた声に顔がかーっと熱を持った。あっという間にアンダーを捲り上げられ、直に胸のしこりを摘まれて体がびくりと揺れる。
「っあ…！」
もう片側に吸い付かれて、思わずカカシの頭を抱え込んでしまった。
「敏感なんだ」
「…は、恥ずかしいこと、言わないで下さい！」
顔を真っ赤にして身体を捩ると、かり、と軽く噛み付かれる。
「逃げないでよ…」
そんな事言われても。
恐ろしく恥ずかしく、恐ろしく気持ちいい。
身の置き所のない羞恥のなか、カカシの手は、イルカの衣服を着実に剥いでいった。傷だらけだがしなやかな肌に、カカシの吐息が漏れる。
「イルカ…、逃げないでよ」
首筋に口付けながら言われてイルカは小さく頷いた。何にせよ今更逃げられない。自分もこうなることを望んでいたのかもしれない。
カカシはゆったり笑うといたるところに口付けを降らせ、その唇が次第に下がっていく。半ば勃ち上がったイルカの雄に近づくと、根元から裏を通って先端に辿り着く。ひくりと脈打つそれは、舌先でくすぐられるとすぐに涙を零し始めた。
舌と、指の刺激で、あっという間に張り詰めた雄をカカシが弄り続けると、イルカの内腿が震え、踵が床を蹴った。
「…ぁあっ、も、やめ…」
それまで噛みしめられていた唇が濡れて赤く染まっているのを見て、カカシはごくりと喉を鳴らした。咥えたまま激しく頭を動かすとイルカはカカシの髪を掴んで身体を強張らせ、やがてびくびくと震えた。
「ご、ごめんなさ…」
腕で顔を覆うようにして荒い息を吐くイルカの、その腕をそっと開くと眦に涙が滲んでいた。
「俺…」
口を開こうとしたイルカを制すと、カカシは強く抱きしめた。
「一度イってからの方が楽かと思って。酷くしたい訳じゃないから」
言いながらイルカの膝裏に手を添えて持ち上げる。いつの間にか手にした傷薬を指先に絡め、イルカの後孔をゆるゆると探り始める。撫でながら押すようにすると、中指が少しずつ入り込んでいく。
「…ぅ…」
「痛い？」
イルカから零れた声に訊ねる。
「だ、いじょうぶ、です…」
眉間に寄せられた皺に口付けると、イルカの眉が下がり、弱々しく微笑んだ。





こんな風に受け入れられるとは思っていなかった。
初めは八つ当たりでイルカに近付いた自分。先生を失ったやり場のない思いが長い間出口を求めていたから。
自分が無くしたと思ったものを、奪ってなお守られている奴が許せなかった。でも、イルカも失っていた。それどころかイルカも同じように縛られていた。
一緒に戦ってみてただ守られているだけの存在ではないことも解った。チャクラに頼れないからか剣技に長けていたのは、それに見合うだけの努力をしてきたということだろう。

そしてその姿は美しかった。

忍刀を振り翳して血飛沫をあげていく姿に見惚れた。
これほどイルカに執着した理由をあっけないほど簡単に理解した。
惹かれていたのだ。
たぶんあの黒い瞳に吸い込まれた時から。
そしてイルカの腕に流れた血はひどく甘かった。その甘さに俺は酔ったのかもしれない。
けれど戦わせたくないとも思った。イルカが弱くないのは解っていたけれど、目の前で失うようなことだけはしたくなかった。できれば里にいて守られていて欲しい。自分が四六時中守れるとは限らないから。
それなのに戦場に出てきて、しかもあんな奴等に襲われているのを見て目の前が怒りで赤くなった。
早く。
早く俺だけのものにしないと！
イルカの気持ちを考える余裕もなく連れて来た。思わず口走った言葉の数々で、イルカの目元に涙が膨らんだ。

ああ、違う。泣かせたかった訳じゃなくて。

言葉を。あなたに俺の気持ちを伝えるための言葉を…。
好きだと口付けたら、ふるふると震えながらその瞼が閉じた。拒絶されなかった事に対する安堵と共に身体に湧いた灼熱に、カカシは性急に事を進めたが、イルカは嫌がらずに苦しげな顔で微笑んだ。





カカシは思わず目の前の唇に吸い付き、空いた手で髪紐を解いた。黒髪を撫でながら解していたところに人指し指も潜り込ませると、きゅうっと締め付けてくる。三本目を入れた時に、小さな呻きと共にイルカの腕がカカシの背中にまわった。
「イルカ…いい？」
音を立てて指を出し入れし、探るように指を動かしていくとイルカが大きく仰け反った。同じ所を指の腹でぐいと撫でると、声が上がる。
「やめ…っ、ヘンに、なるッ…」
腕の力を強くしてイルカが震える。イルカの雄は腹につくほど反り返り、カカシのものもイルカに脈動を伝えていた。
指を引き抜いてからイルカの脚を抱え直し、自分の熱をイルカに押し付けると、くぐもった悲鳴が肩に響く。
「ごめん。少し、我慢して」
先端を捩じ込み、締め付けに耐えながら奥へ進む。少しずつ内部が馴染んできてから、至極ゆっくりと揺すり上げていく。
「う…、あ、あ…」
震えながら涙ぐむイルカの中は、熱く熟れていた。先程の場所を自身の先端で擦ると艶の混ざった悲鳴が上がった。何度か廻すように擦り付けると、イルカの雄が更に膨らむ。
「肩にでも噛みついいてて…」
そういうとカカシは動きを早くした。腰を揺すり上げる激しさに、イルカの喘ぎは止まらなくなり、それが更にカカシを煽る。
黒髪が乱れ、浮かんだ涙さえ淫靡だ。カカシももう限界だった。
「ね、一緒に…」
「…あ、あっ、カ、カシさっ…！」
「イルカ…っ」

理性も矜持も全て捨てて、激しい渦に飲まれた二人はきつく抱き合う。
激しくお互いだけを求め続けた。