夏への扉















上忍、はたけカカシの恋人になると 『一流の女』 というレッテルが貼られるそうである。




その話を最初に聞いた時イルカは正直 『くそったれ』 と思ったものだ。
















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「・・・・あつい、・・・あつ・・んっっ!んっっ、っ・・・・!」

「・・・・あついの?いるかせんせい、ああ、すっごい可愛い。ね、もっとアツクなって・・・」




煽り文句を耳元で囁きつつ、男は嬉しそうに更に深く突き上げてくる。
徐々にスピードを増してくる男に揺さぶられながら暑さと快楽でよく働かない思考で自分は一体何をしているのだろうなぁ、とイルカは一応、考える。

どういう訳でかイルカはたった今、この瞬間、

夏休みとはいえ此処は一応アカデミーの教室で、

しかも真っ昼間、

自分はカカシとくちゅくちゅと卑猥な音を立てながら汗だくでセックスしてたりする。

おまけに体位はタチバック。
しかもカカシに押しつけられた窓枠はアカデミーの低学年用に低くなっているから身体を手すりに凭れかけさせることもできなくて腰を突きだしたこの体勢を保つのが結構辛かったりする。
でも普段授業で教鞭をとっている教卓でスルのはどうしても嫌で、結局窓のアルミサッシに縋ってヤル、というこの体位にカカシと相談の上で落ち着いたのだ。
夏休みのアカデミーに冷房なんて当然ついてはいないから、北向きとはいえ教室は窓をあけても蒸し風呂のように暑かった。
その状態の中でスルにはアルミサッシのアルミとガラスの冷たさがイルカに多少の涼を与えてくれるのでは、というカカシからの提案に乗ったせいもある。
が、実際ヤり始めると窓辺で涼と取る効果などほとんど無いに等しかった。

イルカが汗だくの顔を押しつけているガラス窓の向こうのアカデミーの中庭には今年の春新しく担任を持ったクラスの生徒達と植えた『ひまわり』が今が盛りと咲いている。
しかし、イルカはこの花が昔からどうも好きではなかった。
まだ若い頃、戦場に居た時、見事なひまわり畑を行軍したことがある。
幾日も幾日も続く人殺しの日々の中、人の背丈ほどある『ひまわり』達がまるで自分が殺してきた人間達のように見えてイルカは怖かった。
物言わぬ死者がひまわりとなって蘇り、恨みをこめてイルカをじっと見つめているようで恐ろしかった。
ひまわりの花はそんな戦場の狂気を今でもイルカに彷彿させるのだ。




「あうっっ!!っっ!!」




その時ゆっくりと揺さぶっていたカカシが急に角度をつけてイルカの弱い所を抉った。




「だーめ。何考えてんの?・・・ダメでしょ、ちゃんと集中してくれなきゃ」

「だって・・ひ、ひまわりが・・・・」

「んーー?ひまわりが何?」

「ひまわりが見てますっ・・・!」

「ああ、何だ、そんなこと?んーーでもわかるなぁ、あの花って何か人間みたいだよね。見られているようで嫌なんでショ?ふふふ、やっぱかわいいなあー、イルカ先生。じゃ、もっと見せつけてやりましょーか・・・・」




そして、カカシはイルカの放ったらかしにされていた前に手を伸ばし、扱き始めた。
二カ所からの同時に加えられる快楽にイルカはひとたまりもなく激しく喘ぎだす。
前からの快楽にシンクロした後ろがカカシをくわえ込んだままキュウ、と収斂した。
先程からの緩慢な抽挿にイルカのソコはとっくに熱を持ってじくじくと疼いている。
もっと強く、激しく突いて欲しくてたまらなかった。




「・・か、カカシせんせっ・・・!も、もうっっ!!」

「もうダメなの?俺まだ時間あるよ・・・・」

「も、お願いだからっ!!」

「んーーーイルカ先生にお願いさせちゃ聞かないワケにはいかないかなあ〜」

「か、カカシ先生っ!・・・・あ!・・・もうっ!ホントにっ!」

「じゃ俺のコト好きって言って?ね?」

「好き!好きですっ!!」

「ああ、すっごい嬉しい・・・俺も好きだよ、イルカ先生」




そしてカカシは嬉しそうにフィニッシュに向けて激しくイルカを揺さぶり始めた。
卑猥な肉の擦れ合う音が高まると同時にそこから産まれる快楽も絶頂へと一気に駆け上る。
イルカの瞼の裏にチカチカと白い光が点る。
その光の粒子が弾けてイルカの視界全体に広がる瞬間まであとほんの数秒。

ほんとに何でこんなコトになったのだろうなあ、とイルカは考えていた。








****








上忍、はたけカカシの恋人になると 『一流の女』 というレッテルが貼られるそうである。


その話を最初に聞いた時正直イルカも 『くそったれ』 と思ったものだ。


上忍はたけカカシが恋人を二股も三股もした挙げ句、相手を次々と変えるのは里でも知らぬ者はない有名な話である。
そりゃあ、上忍で元暗部でエリートで金など腐るほどあって、しかも素顔は男前らしい、とくれば女なんぞよりどりみどり、掃いて捨てるほど寄ってくるだろう。
しかも鼻っから遊びとして扱って捨てたとしても、はたけカカシの元恋人だった、という事実は女にとってはまったく恥には当たらず、あの写輪眼に認められた女として一種のステイタスとして認知されるのだというから、一般の男達にとってははらわたが煮えくりかえる話だ。
更に腹ただしい事実はそんな風にはたけカカシに遊ばれ、捨てられた女達が一向にカカシを恨む気配を見せず、




『あの人はとても優しかったわ。私ではあの人の苦しみを受け止めきれなかっただけなの。次の恋人があの人を本当に癒してくれればいいのだけれど・・・・』




などと言い、事実上二股をかけられて捨てられた事すら容認している事実だった。

その話を同僚から聞いた時、イルカははたけカカシの事を本当に嫌な奴だな、と思った。
要するにカカシは自分に忘れられないトラウマがあることを臭わせ、それを餌にして女の母性本能をくすぐり、遊びに利用しているだけに過ぎない、と思ったからだ。
なあーーにが『苦しみを受け止めきれない』だ。
内心で舌を出しているだろう上忍の姿が目に浮かび、イルカは嫌悪感を露わにした。
(それは限りなく同族嫌悪に近いものだったが、自分のことは棚に上げるイルカである)
だから、長年片思いしていた憧れの女をそのカカシに盗られた、と泣く中忍のある謀略についつい乗ってしまったのだ。



『な!イルカ!俺もう我慢できねえよ!あのはたけカカシを誘惑して一遍でもいい、ぎゃふんと言わせてくれ!お前ならできる!お前戦場じゃそっちの方で鳴らしたんだろ?』




確かにイルカは戦場に居た頃、戦忍達の間で一種伝説めいた存在になっていた時があった。
自分の閨を巡って上忍二人が刃傷沙汰に及んだ事すらある。









****








それからイルカは丁度ナルトの担当となったカカシを飲みに誘い、誘惑した。
『他に恋人が何人いてもいい。自分とつき合って欲しい』と。
もちろんイルカにはカカシを落とす自信はあった。
過去に寝た男達は全てイルカの身体に夢中になってきたし、
こればかりは他人と比較できないのでよくわからないが、男達が言うにはイルカは相当な『名器』なのだそうである。
たたき上げの戦忍達をもして『黒の魔性』といわしめた身体と手管にはくのいち並に自信はあった。
しかし、女のいない戦場でならまだしも、何が悲しくて平和な里でも男の相手をしなくてはならないのだ、と頭の片隅で理性が働かなくもなかった。だが、同僚の涙ながらの煽り文句と、あの写輪眼のカカシを落としてから捨てる、という優越感をくすぐる誘惑に逆らう事ができなかった。
ほんの少し心中に残っている罪悪感も今まで泣いた女と男の恨みを晴らすため、と思えば痛まなかったし、何より久々のゲーム感覚に昔の腕がなるというものだった。
内心では馬鹿なことを、と思いつつ、イルカはカカシとささやかな駆け引きを楽しみながらセックスする日々を繰り返していた

イルカの計画通り、イルカの完璧な肉体にカカシは溺れたようではある。

初めてカカシと寝てからこの一月、ほぼ毎日のようにカカシに求められている。

しかし、『恋人』のように朝まで共に夜を過ごしたりすることはない。

今日のようにイルカが一人でいる時を見計らったように突然カカシが現れては身体を重ねるだけだ。

どうやらカカシには夜は夜で共に過ごす相手が他にいることは確かなようだ。

もちろんそれでもいずれはカカシを身体から陥落する自信はあったのだが・・・・








****








はあ、はあ、とまだ激しく乱れる息を飲み込みながら窓の下にズルリ、と床に座り込んだイルカに、カカシは優しくキスをした後、ポーチから手ぬぐいを取り出し汗やら精液やらで汚れたイルカの身体を拭い始めた。




「ごめんね・・・こんな暑い中、しかもアカデミーでなんて無理言っちゃって・・・でも、 だぶんこれから一週間は会えないと思ったら我慢できなくなっちゃって・・・」

「え?任務なんですか?これから?」

「うん、しかもS。暗部と合同で。まったくこの里もいい加減人手不足だよね」

「そうだったんですか・・・お気をつけて。無事に帰って来てくださいね」

「うん、ありがとう。イルカ先生」




そして、カカシはにっこりと本当に嬉しそうに笑うのだ。

途端、きゅん、と胸に痛みが走る。

そして、ああ、やっぱり計算外だ、とイルカは思う。

男に関しては百戦錬磨のはずの自分が最近このカカシの笑顔にほだされつつあるのだ。

カカシの過去の恋人達が言う通り、カカシがどこまでも優しい所為もある。

毎日激しく求められ、それでいて優しく大切にされ、思いやりがあり、いたせりつくせりで、これならどんな女でも彼を恨む気にならないのもわかる、と。

いや、いけない、いけない!

当初の目的を忘れるな!イルカ!

お前の使命ははたけカカシを完璧に誘惑し、他にいる恋人全部を捨てさせモノにした後、笑って逆に捨ててやることだ。

しかし、しかしだ・・・

イルカにキスの雨を降らしながら、大好きイルカ先生、一週間も離れるなんて寂しい、ああ任務なんか行きたくない、と繰り返す可愛い男をほんとに捨てることができるだろうか?とイルカは自信がなくなってきた。

まずい、ほんとにマズイ。

いつの間にか本気になっているのはカカシではなく、イルカの方ではないか?




「どーしたの?イルカ先生?黙りこんじゃって・・・やっぱ嫌だった?」

「いえ、そーじゃありません、ただ・・・・・」

「ただ、何?」

「・・・・・いえ、やっぱり何でもありません」





再び黙り込んでしまったイルカにカカシは当惑したように首を傾げていたが、何か気付いたようにぽん、と拳を叩くと、ひらり、窓から外へ身を乗り出した。




「ど、どうしたんです?何処へいくんですか?カカシ先生?」

「いいからちょっとそこで待ってて」




カカシはにっこりと笑って中庭に躍り出た、

そしてクナイを抜くと、

目にも留まらぬスピードで中庭に咲いていた『ひまわり』を切り捨て始めたのだ。




「か、カカシ先生!何をするんです?!!!!!」




驚いたイルカがカカシを止めようと声をかけた時には、ひまわりは見事に全滅だった。
少なくとも100本はあったろうひまわり花が中庭から跡形もなく消え、かわりにイルカの目の前にひまわりの山がデン!と築かれてた。
時間にしてほんの数秒の出来事である。




唖然とするばかりのイルカにカカシはひまわりの一本を差し出してにっこり微笑む。
そして言った。









「だってひまわりに見られたのが嫌だったんでしょ?だからぜーーんぶ殺しちゃいました。俺、あなたのためなら誰でも何でもいくらでも殺して殺して殺してまくって差し上げます!!!!」









なんて物騒な口説き文句だろう。

でも、イルカの胸は喜びでときめいた。

そして、ああ、もうダメだ、と思った。

やはり自分はカカシを好きになってしまったらしい。

自分のためにいくらでも人殺しをする、と言ってくれたカカシがとてもとても好きだ。

夏のひまわりはイルカにとって多少のトラウマであった事は確かだった。

それをカカシは冗談でも見事に切り捨ててくれたのだから・・・・・・・・




もうゲームなんかどうでもいいか

この人が好きになってしまったのなら、この恋を純粋に楽しめばいいのだ。

この人が自分に飽きて去っていってもそれはその時のこと。

だからイルカはふふ、と笑って今度は心から言った。








「・・・・カカシ先生、俺はあなたが大好きです」

「うん、俺も大好きですよ」

「はやく戻ってきて下さい。そして又うんとエッチしましょう」

「うん、イルカ先生。うんとエッチしましょう」




そして二人はひまわり越しにいたずらっぽく、それでも幸福な口づけを交わしたのだった。













****













「どうしたんです?先輩?さっきからご機嫌ですね?何か良いことでもあったんですか?」




高速で移動しながら聞いてきたのはカカシの暗部の後輩、月光一族の女だった。




「んーー、イルカ先生に本気で好きって言われちゃったんだぁ。あともう一歩ってトコだね」

「それは良かったですね。所でイルカ先生の何処が良かったんですか?」

「んーー?向こうがゲームのつもりだってことはわかってたんだけどさ。そこが良かったんだよね。オビトが死んでから俺ってずっと鬱だったでショ?真剣な恋愛ってかえって重かったんだよね。 イルカ先生くらいの可愛い黒さが丁度癒しになったんだよ。最初は俺も遊びのつもりだったのに人生ってわかんないねー」

「それじゃあ、私のお役目ももう少しで終わりですね?ようやく私も『一流の女』の仲間入りできます」

「ダメダメ、もう少し協力してよ、ヒカリ。イルカ先生が俺に泣いて縋って『他の女と全部別れてくれ』って言うまでさ」

「それまでずっと演技するつもりですか?悪い人ですねえ?」

「仕方ないでしょ?俺だって本気であの人を落としたいんだもん」








そしてカカシは笑って

夏もまだまだこれからだしね、

と追加した。























2004.8.4
ととまさ様12000キリリク『恋人のいるカカシを落とすイルカ』。予想通りイルカ逆にオトされてます!! ととまさ様ごめんなさいいい!!!!!やっぱり気合いが足らーーんん!!!!(;;) とってもヌルいと思うので表にて発表。
素材は■M's gallery 様より頂きました。ありがとうございました。

蒼子様のサイトでキリ番を踏んで書いて頂いたものです。らぶらぶですね、らぶらぶっ!
黒いイルカ先生、とっても素敵…♪ カカシ先生が実はかなり一生懸命なのもイイ。
本当にどうもありがとうございました!


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