「え、あの人?うん結構具合良いよ。そりゃあんまり巧くは無いけどその分体力はあるしね、愉しめる。」
   上忍ばかりの宴会で、あの人はそう、のたまったらしい。

   はたけカカシに押しと勢いで恋人になられてもう、三月になる。
  始めの頃は幾らカカシが吹聴して回っても、誰も信じはしなかった。
   何故ならカカシは最高の上忍の腕と最低の女癖で名を馳せた人物だったから。
  なのに、カカシ当人の(しなくても良い)努力の結果。
  今現在、付き合っているのがイルカである事が皆に認識されてしまったので、ある。
    ・・・そしてイルカは、望みもしない嵐に巻き込まれる事となった。

  はたけカカシと言うブランドに憧れる男や女。
  そして嘗てカカシと『お付き合い』した事のある女性達。
  彼等から様々な反応が出始めたのだ。
   『表』に嫌味『裏』に嫌がらせ。
   犯人の特定出来るもの、出来無いもの。
   ロッカーが水没する事数回。バケツの水が降って来たのも数知れず。
  うっかり手放した私物は殆どが壊されてゴミ箱から発見される。
   イルカの限界が、すぐ其処まで来ていたその時
 ・・・カカシは、こう、ほざいたのだった。

  訊ねた上忍は質は悪いが冗談のつもりだったのだろう。
  だが、カカシがこう発言した為皆の認識が一変した。
   イルカに対して『暇な上忍に執着され、弄ばれている哀れな中忍』から
  『アソんでる上忍をその気にさせる程イイ、中忍』へと。
   ・・・そして別の、在る意味前より酷い嵐が、やって来た。

  カカシが不在となれば、にじり寄って来る輩。
  相手が中忍ならば、良い。
  精々「寂しいだろう」だの「慰めてやる」だのと言った言葉遊びで終わるから。
   もしもの時のカカシが恐いのか、それ以上の無理は仕掛けて来ない。
  問題は階級上の奴等だった。
   殴り倒すのも拙いが、口で言った位では退かない連中。
   いざとなったら平然と
  「アッチが誘って来たんだ」と言ってのけるだろう、相手。
   カカシの事を良く知っている分
  「どうせ躯目当てだけの関係」とタカを括っている為、中々諦めないのだ。
   それらとの鬼ごっこの日々に良い加減イルカは草臥れていた。
   なのに
  「他の奴に触らせちゃ、駄目ですよ。アンタは俺のなんだから。」
   襲い掛って来た上忍を気合で張り倒して逃れたイルカが、一息ついた途端。
  何処からか現れた『ずっと高みの見物をしていた』らしいカカシの一言。
   にやにやとイヤラシイ笑いの付いたそれに

    イルカの堪忍袋の尾は・・・ぷっつりとキレた。
   

  「何が良いんだろうなぁ」
  黄昏の受付所。
   疎らに居る忍達にも切羽詰ったものは無い。
  一段落着いて、ぼぅっとしていた中忍は傍らの同僚が溜息混じりにそう、ボヤくのに半ば無意識で応じた。
  「何が?」
  「いや、な。あれだけ綺麗なカカシさんが『そういう』趣味でも判るけど。結構ゴツい上忍が俺に誘いをかけて来るのは何故かなって。」
   戦場で癖にでもなったのかなぁ でも俺、カカシさんなら兎も角、あんまりガタイの良い相手とはシたく無いんだけど
  「て、言うか勃たねぇと思うし。」
   ぶつぶつ 小声での呟きなのに妙にはっきりと受付中に伝わる、声。
  「ちょ、ちょっと待て!お前とはたけ上忍って・・・」
   泡喰って訊ねる同僚に、
  「あ?何か?」
   イルカは恍けた笑みを浮かべた。


  そ・し・て
 「何言ったんですかっイルカ先生〜〜!」
  カカシが受付に飛び込んで来たのはそれから更に2週間程してからであった。漸く話が伝わったらしい。
 「何だか最近、妙な誘いが多いと思ったら・・・イルカ先生!何て風聞を・・・っっ」
  キャンキャンと喰って掛る、上忍。それに
 「風聞?俺何か言いましたか。」
  しれっと言ってのける、中忍。
 「だからっっ!」
  喰い付かんばかりに接近したカカシの、机に着いた腕を引く。そしてほんの少しバランスを崩したカカシの
 「!!」
  耳朶を軽く、噛んだ。
  途端、雷撃を受けたかの如く跳ね上がったカカシは・・・そのまま地にへたり込んだ。
 「おや、大丈夫ですか?カカシさん。」
  誰の目にも何があったのか明らかなのに、いけしゃあしゃあと声を掛ける、中忍。
 「イ…イル・・・」
  呂律の回らない様子に苦笑して。
 「あ、済まん。この人、休ませて来るから。」
  同僚に声を掛けると。イルカは腰が抜けたらしい上忍を抱えていった。



 「・・・イルカ先生・・・何を・・・」
  必死で問い詰めようとする姿に、流石・・・と感心する。
  実はイルカ、今朝の食事に一服盛っていた。くの一用の媚薬、を。
  無味無臭。それ単品では何も身体に影響しないが、対になるもう一種を服用すると途端全身が強烈な性感帯となってしまう、薬。
  そしてイルカは対の一服を自分の口に含んでいた。
  甘噛みとは言え付いた傷から瞬時に回った薬は、元々敏感な部分から強烈な刺激を身体に巻き起こした筈・・・である。
  現に今、カカシは話しをする事すら苦しげなのだ。シーツの擦れる感触すら拷問となる、薬。
   ・・・だが、他人には『イルカ』の愛撫に反応した様にしか、映らない・・・

 「アンタが言ったんでしょ。他に触らせるなって。」
  触れる息すら感じると承知で、耳元で囁く。
 「だったらそれなりに協力して下さいよ。」
  あ、それからこの薬俺には耐性ありますから効きませんよ、念の為
  後の事を考えて釘をさして置く、イルカ。…勿論肌に息を吹き掛ける様にして。
 「く・・・そっ・・・」
  受付傍の医務室。
 薬の与える感覚から逃れようと、身動きする都度却って甘い声を上げてしまう、上忍。
 「結界張りましたから。」
  覗きは出ませんよ 安心して下さい
 イルカの言葉に気が緩んだのか、カカシは声を抑えられなくなる。
 勝手に悶え、のたうち・・・遂には意識を飛ばしたカカシをイルカは大切に抱えて帰った。


  嘘では無い。確かに『覗き』は出なかった。
  だが、中に居る人間が故意に漏らせば『音』位漏れる。
  そしてイルカには犯意があった。


  これ以降イルカに言い寄る人間や嫌がらせは格段に減った。
  替わってカカシに手を出そうとして反撃を喰らう馬鹿は激増したのだった。
 


  でも別れようとはしないカカとイル 馬鹿ップル?




     「天手古舞」のちゃきっ様より相互リンク記念に頂きました。ありがとうございます!
     イルカスキーさんはウサギ部屋に是非行ってみて下さい。気分爽快?!

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