「で、カカシよ。どうなんだ?」
  酒臭い息を吐きながら、男がカカシに訊ねた。

  親睦会、と称するアカデミー教師と上忍師の宴会。
 本来なら来たくもないモノだったが、『今年は子供を受け持った』からと火影から強制され、
 「俺、出席しますから。」
  家に居ませんよ、と半同居人(今だ同棲に至らず)にあっさり告げられて。
 致し方なくカカシは会場の置物となっていた。やはり口に合う物が無い。
  ・・・ので、必然的にアルコールのみを摂取する事と、なる。
 幾ら上忍が薬物耐性を持とうとも、カカシの肝臓が化け物じみて居ても・・・空きっ腹で飲めば回るのだ。
  拠ってそうは見えて居なくとも。はたけカカシ、結構出来上がっていた。

 「あん?」
  寄って来た髭の大男が手酌でやりながら人の悪い笑みを浮かべる。
 「?どうって。」
 「イルカだよ、イルカ。一緒に暮らしてんだろ。」
 「イルカ先生ぃ?一緒には暮らして無〜いよ。」
 「は?一緒に帰って一緒に来る癖に。」
 「でも、住んじゃ駄目って言われてるんだもん〜」
  口布をしたままいっぱいやる、と言う器用な真似をしている男はその口布の上からも判る位唇を尖らせてみせた。
 「だから夜はちゃんと帰って、朝また行ってるの〜」
 「そりゃまた、面倒臭ぇ事を。」
 「ま〜時々は泊めてくれるけどぉ。」
 「ふぅん。で?どうなんだ。」
 「だから何よ。」
 「イルカの『味』だよ。」
  にた〜とイヤらしい笑いを浮かべるのに
 「ん〜、物凄く美味いよ。」
  さらりと答えるカカシ。
 「へ〜美味いのか。」
 「うん。俺の口に合うって言うのかな。病み付きになりそう。」
  くいっと杯を空けつつ、カカシ。
 「今まで色んな物食べたけど、あれだけ合うのは初めて。」
 「ほぅ、お前がねぇ。そんなに良かったんか?」
 「ん〜毎日食べても飽きないもの。」
   周囲が聞き耳を立てる中、会話は続く。
 「毎日『喰って』るのか。で、飽きないと。」
 「うん。相性が良かったのかな。」
 「相性か。」
 「そ。あっでも、あの人忙しいと断られちゃうから毎日でも無いかな。」
 「そうか。まぁ、あっちの方が大変だろうから譲歩しねぇとな。」
 「うん。ちゃんと言う事利いてるよ。嫌われたく無いし〜」
 「ほぅっ、お前にしちゃ殊勝な事だな。でも我侭言ってるんだろ。」
 「そんなには言ってないよ。あの人、何だって上手だし。ま、偶に『お願い』するけどちゃんとしてくれるから。」
 「そうか良かったな。幸せになれや。」
 「うん〜勿論。」
  髭がやってられん…とばかりに会話を打ちきる頃には勝手に想像して自滅した上忍がトイレに駆け込んだり、鼻を抑えて屈んでいたり、した。
 そして
 「カカシ先生。アンタ・・・何の話してるんです。」
  ゆらり 何故か異様なチャクラを纏った中忍が、一人。
 「あ、あれ。イルカ先生、どうしました?」
  判ってなくとも身の危険は感じたらしい、元暗部。じりっと逃げ腰でイルカから距離を取ろうとし・・・
 「主語を抜かして、話すんじゃねえっ!テメェのお蔭で先刻から妙な視線が来るんだよっっ」
  バキ
  見事な正拳突きである。綺麗に一直線に飛んだカカシは後頭部から壁に突っ込み…打ち抜いて廊下に落ちた。
 「アスマ先生。」
 「な、なんだ?!」
  中忍相手に情けない、とは思いつつもそのあんまりな迫力から逃れられない。
 何せこちらは解っててやっていたのだ。立派に犯意が在った。
 「情報の伝達は忍の基本、でしたよね?」
  だったら正しく『内容』を伝えないと
 「ココの面子が馬鹿な流言を発する前にキチンと!主語のある会話で修正しておいて下さい。」
  あ、それから此処の修繕費はカカシ先生とお二人でお願いします
  受付笑顔で駄目押しをされる。但し、眼は全く笑っていない。
 「・・判った。」
  恐かった、普段とのギャップが。流石3代目が可愛がっているだけの事はある。
 「じゃあ『宜しく』お願いしますね。…お先に失礼します。」
  言葉だけは丁寧に、イルカがずんずん帰っていく。
   …カカシを其の場に残したまま。

 
  

  その翌日、うみのイルカは急な任務を受けたらしい。
   2週間後受付所で妙にやつれたカカシが
  『イルカ先生〜許して〜』と喚きながら、戻って来た中忍にしがみ付いていたと言う。

   …尚、宴会場に端を発した流言は、広がる前に二人の上忍によって徹底的に排除されたそうである。


  馬鹿? 




     「天手古舞」のちゃきっ様より相互リンク記念に頂きました。ありがとうございます!
     こちらのイルカ先生は嬉しくなるくらい強いです。

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