Scarecrow&Dolphin





「……あ」
 突然の吐息のような声にカカシは振り返り、足を止めていたイルカの視線を辿る。馴染みの店先に様々な玩具付き菓子の箱が積まれていた。 近頃はオマケの方に重点の置かれた商品が増えていることぐらいは、イルカもカカシも知っている。
「イルカ先生、そーゆーの好きなんでしたっけ?」
 さも意外そうに、そして何故か楽しそうにカカシは問う。
 互いにこういったモノを買ったことはない。カカシは甘い物を苦手にしていたし、イルカは生活必需品しか持たない主義だった。 それをカカシは知っていたから、イルカが何に興味を持ったのか気になったのだろう。
「どーれが欲しーいんデスカ?」
「いいえ。ちょっと気になっただけです」
 行きましょう。足を止めて済みませんでした。
 そう言い出しそうなイルカの腕を掴み、カカシは菓子の箱の積まれた店へ向かう。
「まあ、そー言わずに。オレが気になったんで、見ていきましょうヨ」
「…はあ」
「センセーは、どーせ、子供らの話題にでたモンでも気になったんデショ」
「まあ、そんなところです」
 やけに機嫌の良くなった上忍に引きずられるまま…ではなく、ちゃんと共に歩いて、二人はその棚の前へ立った。
「へーえ」
「結構な値段しますねえ」
 カカシは素直にその豊富なバリエーションや多岐に渡るジャンルに感心を示した。 イルカは単純に値段をチェックしたまで。別に経済観念とか、アートセンスの問題ではない。
「イルカせんせえ」
 上忍が甘えた声で指ししめしたのは、海洋生物のフィギュアが入ったラムネ菓子だった。 当然というか、そのパッケージには数種の海洋生物と共にイルカのフィギュアも紹介されている。
「こーれ買っちゃおうかなー。あー、でも中身分からないんデスねー」
 ま、でもイルカ先生見つけるのは、得意ですから。
 その上忍の一言に、その生物と同じ名の中忍の笑顔が温度を下げた。彼を良く知る人間にしかわからないレベルで、だが。
 カカシはそれを気にもとめず、幾つか箱を手に取っては表面を撫でたり、手のひらで重さを量ってみたり、臭いを嗅いだり、耳元で振ってみたりしている。 どうやら中身を探っているらしい。
 目安となるものもなく、果たして目当てのものが判別できるか怪しいものだ。
 が、この上忍ならもしやすると見本や目録なしでも百発百中で中身を探り当てるかもしれない。それだけの能力があるのだ。 例え、そうは見えなくとも。
「なんだか、子供みたいですね…」
「そ−ですかー?」
 真剣に探していながら、イルカの言葉にはちゃんと反応するあたりは流石、というべきか。 どうもカカシはイルカに窘められるたくて、わざと子供っぽい振る舞いをしている節があった。
 しかも二人でいる時は何かやらかすとしても、イルカが呆れながらも気持ちよくカカシを叱れるぐらいのことしかしない。
 二人で、そんな自分たちを楽しんでいるみたいに…。
「こっれかなー」
 一つ、目星をつけた箱を手に、カカシは微笑む。ずいぶんと自信ありげだ。
「じゃあ会計してきちゃいますね」  そう言って店へと入っていく後から、イルカもついてくる。
「アレ? イルカ先生も買うんですか?」
「ええ」
 いつの間に選んだのか、イルカもカカシとは別のシリーズの箱を一つ、手にしていた。

     * * *

 それぞれ一つずつ、玩具付き菓子を買って店を出る。 二人並んで歩きながら、カカシは自分の箱を早速開けた。
「イルカ先生、ホラホラ〜」
 その手には狙い通り、イルカの親子が仲良く泳ぐフィギュア。そして箱の底には小さなラムネ菓子が一つ。
「うわぁ。こりゃホントにお菓子のがオマケですねー」
「別に好きなワケではないんですから、構わないでしょう」
「そりゃあまあ、そーうなんですケードねー」
 気は心って言うか、一応菓子なんだから菓子がメインであるべきなんじゃないですかねー。
 とりたてて菓子に執着がないどころか、苦手にしている人間とは思えないカカシの物言いである。
「ああ、そう言えばー」
 イルカ先生は何でした。
「開けてませんよ」
 子供じゃあるまいし、道端で買ったものを開けなんて。ちゃんと家に帰ってから、ゆっくり確認すればいいんですよ。
「はいはい。で?」
 小言を聞き流す上忍に、イルカは沈黙で答える。それをも流して、カカシは続ける。
「先生、中身探らずに選んじゃったでしょー。ちゃんと欲しい買ったか、気になりません?」
「気になりません」
「自信あるんですねー」
「ええ。無駄遣いする気はありませんから」
 そう言って、カカシに見せた箱の側面にはこの箱には【オズのかかし】が入っていますと明記されていた。
「ちゃんと、欲しいものを選びましたよ」





「Nartic Boy」の蛙娘。様から頂きました。ありがとうございます!
カカシセンサーも凄いですが、イルカセンサーは遠隔仕様でもっと凄いですねvv


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