「黄昏」 3

 

 

 

「でも……ずっと…あなたの姿が見えなくて………そのまま…あなたが任務に言ってしまって……姿が見えなかったら……憶えている姿が黄昏のように消えてなくなってしまうのが早いのか…俺を呼んでくれる声を忘れてしまうのが早いか…記憶って…どっちが早いでしょうかね?」

一息にそこまで言うと…また顔を床に伏せた。

 

カカシは目の前で顔を伏せているイルカを見つめる。
ほつれた髪がうなじのそばで揺れていた。

……抱きたいな。

ポツリと思った。

任務から帰ってから彼の目を…身体を心配していた。
だから自分の性欲なんて求めるつもりなんてさらさらなかった。
性欲とはちょっと違って…いつもより弱気で小さく見えるイルカ。
やけに素直な彼を何とかしたくなった。

怖いのだろうか?

悲しいのだろうか?

つらいのだろうか?

きっとその全部を思っているのだろう。

 

 

外は蒸し暑い。
林の中では死期の近い蝉達が我先にとばかりに鳴き叫んでいる。

その音が呪文か何かのように頭に響き…カカシは忘れていた何かを思い出した。
光の中…過去からの経験。
思い当たる一つの方法。

 

思い付いたら、それと同時にカカシは吸い付くようにイルカの唇に自分のものを押し当てた。

驚きで後ろに引く身体を引き寄せて腕に掻き抱いた。
舌で唇をこじ開けて口腔に入る。
上顎を舐め舌を絡ませて、息苦しそうに目を閉じるイルカ声を奪った。
そのまま畳みに押し倒すと自分の上着を脱ぎ、イルカの上着にも手をかけて剥ぎ取った。
露わになった首筋に吸い付き耳の穴に舌を差し入れる。
粘着質な音を立てながら甘噛みすると、身震いをしながらイルカは縋るようにカカシの背中に手を回し抱きついた。
汗ばんだ肌に紅い掻き痕が残る。

唇を放すとカカシは息を切らしながら
「大丈夫。俺のことイルカ先生が忘れないように…身体に教えてあげるから…俺ね…こんなに鼓動が早くなるなんて…あなたとだけなんですから……ね。感じるでしょう?」
そういって胸を密着させ腕に力を込める。
イルカの髪が肩越しにコクコクを揺れた。
小さな声で「カカシさん…カカシさん。」と呼ぶ声が聞こる。

カカシはイルカの目蓋に唇を寄せると近くに転がっていた包帯を手にとった。

「目、閉じてね……イルカ先生、俺を信じてください。次、開けたときには絶対に見えるようになっているから。」

耳元で囁きながらカカシはイルカの目に再び目隠しをした。

 

そんな都合の良いことがあるのだろうか?
イルカはそう思った。

でも…閉じていても開けていても景色は変わらない。
それなら…カカシの暗示にかかって…今だけでいいから彼を感じたいと思った。
なんだか分からない不安とか孤独とか恐怖とか…そういうものをカカシに埋めて欲しくてたまらなかったから。

真っ暗な視界の中…カカシの指の動きだけを感じて、息使いだけを聞いて…
彼だけでいっぱいになってしまいたかった。

「信じるから…覚えていられるように……抱いてください。」
語尾が小さくなりながら願望を口にする。
カカシはイルカの小さな声も聞き漏らさずに 「いいよ。」と短く返事を返した。

するすると脇腹を撫でならが胸の突起を口に含む。
わざと大きく音を立てながら吸うとイルカは口を両手で覆いながら震える。
硬くなって熱が溜まるのを感じる。
カカシの舌がそれを舐めこちらを向いている色違いの瞳を思い浮かべた。

「んっ……ふっ…んんっ……んっ。」
押し殺す声。
耳たぶまで紅く染まる。
意地悪くもどかしい感覚に下半身が熱くなるのを感じた。
イルカは堪らなくて腰を浮つかせると柔らかい髪の感覚が胸から遠のいた。

カカシは顔を上げ、息を弾ませながら言葉にした。

「イルカ先生の乳首、紅くなって立ってるよ。硬くなってる…ねぇ…先生…わかる?感じてるの?」
そういいながら今度はイルカの張り詰めた下半身を布越しに撫でる。
「あっ…やっぅんっ。」
その刺激にイルカの身体は跳ねる魚のように背中がしなった。
イルカは息をつめて
「……そんな…こと…言わな……。」
泣き声のように途切れ途切れに口にすると、カカシはイルカの下着に手をかけてそれをいっきに下ろした。
外気が露になった肌にふれとっさに縮こまる。
しかしカカシはその両足首に手をかけ大きく開かせた。
「やっ!ヤダ、駄目。」
そう言って起き上がろうとするイルカの足首を高くあげる。
その体制になるとイルカは起き上がれずに腕を畳みについて上半身は沈んだ。
カカシは彼の中心にそっと手をかけ先垂れで濡れる鈴口を親指でそっと撫でる。
「イルカ先生…明るいからよく見えるよ。先生のここ、ヒクヒクして紅くて可愛い…。」
あからさまに嬲られてイルカは泣きそうになりながら声を出した。

「やだ………どうして…そんな……ふうに……言う…の?」
いつものカカシはそんなイヤラシイ事は言わない。
どうしてこんな時にそんな意地悪をするんだろう?と思った。

カカシは舌でイルカを舐め上げならが興奮した息使いで答える。

「だって、先生は今、見えないんだから言葉で教えてあげないとダメでしょう。それとも目隠しとって自分で見ますか?次、目を開けたら絶対に見えるんだから。」

その自信はどこから来るのだろうか?
カカシは絶対に見えると言い切った。
医者にもわからないと言われたのにカカシにはわかるのだろうか?
イルカがそんなことを思うとその思考を掻き乱すようにカカシがイルカの中心を口に含んだのを感じた。

「あっ…あっん……あぁ……っ。」
もう、押さえることも忘れた口からは甲高い、自分とは思えない声が洩れた。
カカシが口に含むイヤラシイ音だけが耳につく。

揺れる銀髪。

長い指先。

白い肌。

綺麗に筋肉がついた身体。

見えなくても透けて見えそうなくらいカカシを感じる。

真っ暗な視界に浮かび上がる…残像、黄昏のようなカカシ。

中心に溜まる熱。

不意打ちのように最奥に指を差し込まれてイルカは悶えた。
見えないのがもどかしい。
見えないのに怖いくらいカカシを感じる。
浮つく腰を上げるとカカシの指の数が増えて押し込まれ、引き抜かれる感覚に内股が震えた。

「先生…もう、欲しい?ねぇ…先生。」
カカシの息が荒い。
彼の熱い先端が最奥に押し当てられるとぬめったイヤラシイ音と感覚を感じた。
「カカシさん……。」
もう強請るような声しか出せなくてイルカはカカシの体を弄った。
胸板をすべり鎖骨をなぞり、首筋をなで頬を両手で包むと引き下ろすように口付けた。
カカシを感じたくて、もっと感じたくて一生懸命といったら変だがそのくらいの気持ちを込めて唇を押し当てた。
カカシはそれに答えるように腰を押し進め自身をイルカの中に沈めた。

「あっ……ふぅ……ぅふ……んっ。」
イルカが懸命になってカカシを受け入れて、息を吐いた。

 

その時、スッと目の前に光がさして真っ白になった。

目を覆っていた布が取れたのだ。

 

短く息を吐きながら、何度も瞬きを繰り返し…顔を上げると……。

めずらし汗だくになったカカシの顔が見えた。
頬が少し桜色で両目を細めて、嬉しそうに…本当に嬉しそうに笑っていた。

「見えた?イルカ先生。」
そう言って笑っている。

 

何が起きたか分からない。

暗闇だった世界が、カカシの笑顔と一緒にいっきに明るくなったのだから。

 

イルカが上がる息でボンヤリとうなずくとカカシは短く答えた。

「よかった。」
そういいながらイルカの髪を掻き乱し頬に目蓋に口付ける。

「イルカ先生、イルカ先生。」 と呼びながら腰を揺すり動かしてきた。

「あっ…やっン……まっ……。」

待ってと言えなくて、何が起きたかも分からなくてイルカが再び目を閉じるとカカシが自分の中で放ったのを感じた。

声と匂いと感覚と……

表情を見ることができて感じた。

その顔を見て自分も彼の腹の上を汚した。

 

 

 

 

 

 

再び目を開けると銀髪が見えた。

肩口に揺れる銀髪。
イルカはその頭を撫でながらポツリと呟いた。

「………見える。」

さっきまでの暗黒が嘘のように消えて無くなっていた。
視線の先はカカシの頭があって見慣れた天井が見えた。

昼間なのに畳みの上で、しかも裸で抱き合って…
お膳の上にはカカシが支度してくれた昼ごはんのそうめんが見えた。
氷が溶けて水になって浮かんでいる。

イルカがグイグイと目を擦ると覆いかぶさっていたカカシが起き上がりその手首を掴んで止めた。

「あのね、暗示をかけられたんですよ。イルカ先生は。」
カカシは汗を拭いながら口を開いた。

「暗示?」

「先生が授業でつかった薬草ね、あれ分量を間違えると暗示効果が強くなるんです。
  自分で見えなくなるかもとか考えませんでした?もしくは医者の答えが曖昧だからそれで暗示にかかったのかもしれません。
  包帯とっても見えないかも、見えなくなるかもって。だから俺は絶対に見えるって逆に暗示をかけたんです。」
そう言ってカカシはイルカの額の汗も拭いた。

焦点が会ったイルカの瞳がカカシを写す。
納得がいかないといった顔をしている。

その顔があまりにもいつものイルカなのでカカシは思わず笑った。
それこそ声を上げて笑ってしまった。
その反応にイルカは思わず頬を膨らませる。

「教科書にはそんなこと書いてなかったですよ。本当なんですか?」

「文面にはないこともあるんですよ、経験です。俺の。」
思い出してよかった。
そう言って笑った。

 

夏の風が窓から入り込み風鈴を鳴らす音が聞こえる。

その情景は瞳の奥で考えていたよりもずっと暑くてまぶしかった。

イルカは少し俯きながら口を開いた。

 

「ありがとう…ございます……治してくれて…。」

その言葉に目を細めるとカカシはイルカの手を引いて立ち上がった。

「風呂、入りましょうよ〜あっついです。汗ながしたら昼飯食べて残りの夏休みの予定をたてましょうね。」
振り返り笑うカカシにイルカは少し困った顔をしながら微笑んだ。

見えても見えなくても同じカカシの掌の感触。

脳裏の奥に見えていた黄昏のカカシは今そばにいてくれる。

 

 

それがどこか、こそばゆくて……まともに顔を見ることができなかった。









END




2004/08/26

77777hitをふんで下さった「ととまさ様」からのリクエスト「一時的に目の見えなくなるイルカ←カカシ」 でした。

無駄にラブい…二人。へたれカカシも好きですが。紳士なカカシも好きです。(このカカシはそうでもないけどな)
漢なイルカも好きだけど。まぁ…たまには弱きなイルカも可愛いかなぁ〜とか。
でも、やっぱり基本は幸せでしょう。
最後まで読んでくださってありがとうございました。


「桜森祭」様でキリ番を踏んで書いて頂いたものです。自分でリクを出した癖に、
途中イルカ先生と共に心細くなった私です…(汗)←オマヌケ。
麻利妹様、ステキな作品をどうもありがとうございました!

 


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