よろしくね。





「イルカせんせ〜、年末、任務が入っちゃいました〜…」
「あー、そうでしたね。俺も見ました」
イルカの部屋に入ってくるなりカカシはイルカの腰にはりついた。その頭をぽふぽふと撫でてイルカは言葉を続ける。
「任務なんだから仕方ありませんよ。俺だってカカシ先生と一緒に年越ししたかったですけどね。雑煮でも作って待ってますから」
「イルカ先生と紅白見て、年越し蕎麦食べて、その後年越しエッチする予定だったのに〜」
「年越しエ…、そんな予定勝手に立てないで下さいっ!」
撫でていた頭をバシッと叩き除けてイルカは顔を赤くした。
「え〜、恋人同士なんだからそんなに照れなくてもいいのに〜」
擦り寄ってくるカカシをぱしぱしとはたきながらイルカは後退り、壁際まで下がってしまった。カカシはそれに引かれる様に移動してくる。イルカは近寄る顔を掌で押して除けながら眉間に皺を寄せて反論した。
「そういう問題じゃありませんっ。俺はですね、新年を祝うという厳かな気持ちをですねえ…」
「十分に厳かじゃないですか! 俺にとってのイルカ先生は突き詰めるとそんな存在ですよ?!」
「…あなたバカでしょう?」
「だからそんなに照れなくても…」
「うるさいっ! そっちにばっかり持っていくなっ!」
人が真剣に考えているのにこの男は茶化してばかりだとイルカは溜息をつき、カカシから顔を背けるようにして呟く。
「今年一年…あなたが無事だったことを感謝して、これからの一年もそうであるように祈って…」
「うん、そうだね」
「…俺ばっかり…」
「ん?」
小さい声で呟くのにカカシは耳を寄せる。赤かった筈の顔色が思っていたほど良くないのにカカシの顔も曇る。
「…どうせ俺ばっかりそんなこと考えてるんです」
「イルカ先生」
「いいですよ、もう…」
「イルカ先生、そんな風に言わないでよ。俺だってあなたと同じくらいあなたのコト心配してるんだから」
カカシはイルカをぎゅっと抱きしめて、額を摺り寄せるようにしてから頬にちゅっと口付けた。
「カカシ先生…」
「俺の前からいなくなったらどうしよう、って」
「うそ」
「嘘じゃないよ。いつだって心配だから。こうやって腕の中に抱え込んでる間は間違いなく俺のモノでしょ? セックスして繋がってる間はどこにも行かない、俺だけのイルカ先生でしょ?」
カカシの発言にイルカは再び顔を赤くして俯いた。



□■□



それが数日前の出来事だ。
今日も受付け任務に出て残業もし、帰宅して年越し蕎麦をつくる。
絶対帰ってこないだろうなあと思いながらも一人分には多いめんつゆを作り、雑煮の下ごしらえをした。一人分の蕎麦を茹で、買っておいた鴨肉と葱をつゆに入れて火を通した。エビ天でもよかったかな、と少し笑いながら蕎麦とつゆを丼に盛る。一升瓶からコップに一杯だけ酒を注いで一緒に卓袱台に運んだ。
雑多な音のするテレビをつけてぼんやりと見ながら蕎麦を啜る。

今年が終わり、来年が今年になる。

卓袱台に置いたままの丼を脇に除け、そのまま突っ伏した。
「新年おめでとう…。早く帰ってくればいいのに…」



□■□



ふと気付くと寝台に横になっていた。いつの間に寝てしまったのか…。
そしてこの人はいつの間に帰ってきたのか。
自分を背後からしっかりと抱え込んで眠っている男。
眠り込んでしまった自分をここまで運んでくれたのか…。いや、それよりなんでこんなに早く里へ帰ってこれたのか。きっと今眠っているのも半分はチャクラ切れのせいだろう。こんな風に俺が身じろいでもまったく起きる気配がない。
早く帰ってきてくれたのは嬉しいけど、慌てて怪我でもされるほうが心配なんですけどね…。
無防備にすいよすいよと眠るカカシの鼻を少し摘んで溜息をつく。
やっぱり俺のほうが想ってる気がするんだけどなあ。
まあ、でも、せっかく準備もしたし、明日の朝には雑煮を食べさせてやろうかな。
「今年もよろしくお願いしますね」
眠る顔に新年の挨拶をして、今度は逆に抱え込むようにカカシの身体を抱いて、イルカもまた目を閉じた。




END



(2005.01.02)

正月早々(でもない…)の更新でございます。除夜の鐘でも消せない煩悩の
証拠ですね〜(笑)






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