酔漢





今日はイルカ先生の帰りが遅い。アカデミーの親睦会だそうだ。

ちくしょう、あいつら毎日イルカ先生と顔を合わせてるくせに、今更何が親睦会だ。
終業後のイルカ先生を独占するなんて許せーん!、と朝イルカ先生が家を出る時に騒いだら、じっとりとした目で睨まれ、子供じゃないんだから我儘言わないで下さい、と往なされてしまった。
でもでも。
俺は元々心が広い方ではないが、イルカ先生に関しては極端に狭いのだ。人にも言われるし、自覚もしてるよ。
だから我慢しておとなしく家で帰りを待ってたけれど。


ああ、もうこんな時間だ。


イルカ先生だって俺が待っているのを知っているんだからもっと早く帰ってくればいいのに。
いや、でも、あの人の事だから、みなくてもいい面倒をみているとか、しなくてもいい世話をしているとか、酔っ払った奴に捕まっちゃってるとか、何処かで酔いつぶれていたりとか。
あれこれ考えていたら、もう心配で堪らなくなってきた。


迎えに行こう。その方が手っ取り早い。今の時期、屋外で酔い潰れていたりしたら忍びだって風邪くらいひいてしまう。
そんな風に自分に言い訳しながら、聞いていた店を探して素早く潜り込む。

店の奥にある座敷でけっこうな歓声が上がっていて、その中にはイルカ先生の声も混ざっている。俺は襖にぴったりと張り付いて中の様子を窺ってみた。
あーあ、あんなに酔っちゃって。
どうやって帰るつもりだったんだよ。誰かに送らせるなんてとんでもない。あんな潤んだ目で、上気した頬のイルカ先生を誰かに触らせたりするもんか。
俺は襖をすぱーんと開けてずかずかと部屋に入ると、イルカ先生の腕を取った。

「この人連れて帰るけどいーよね?」

部屋にいた同僚たちが固まった空気の中コクコクと頷く。
当の本人は
「あれぇ〜、カカシせんせぇ、せんせぇも飲みましょ〜」
などとけらけら笑っている。
「はいはい。アンタ飲みすぎですよ。帰りましょうね」
固まっている同僚たちを尻目にさっさとイルカ先生を店から連れ出した。



酔っ払いを背負って帰る道。

「イルカ先生、大丈夫ですか?」

吐く息が白い。冬の空気がぴりぴりと肌に刺さるけれど、イルカ先生を負った背中はとても暖かい。

「カカーシせんせぇ」
「なんですか?」
「せーんせぇ」
「はいはい」
「へへー、だいすきー」

かくんっ、とカカシの足が一瞬止まる。
今なんか物凄くうれしい事言われたような。

「すきー。ずーっといっしょにいましょーねー」

まったくこの人は。
こんな時に言うなんてズルイ。きっと明日になったら覚えてませんとか言うんだ、間違いなく。


首にぎゅうっと巻き付いたイルカ先生の腕に、赤くなった頬を押し付ける。

「酔っ払いが何言ってんですか」

よいしょっとイルカ先生を背負いなおして。緩んでしまった顔を引き締めることもできずに。

「ま、俺なんか愛しちゃってますけどね」

背中で、おれもー、と笑う声。くすくすと小さな振動が伝わってくるのが心地いい。

やがてそれは静かな寝息となり。


顔を赤くした二人の帰り道。




<END>







こんなイルカ先生なら、私の顔も赤くなっちゃう。ラヴリー中忍。

(2004.02.01)






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