暗闇の中の灯





三代目の葬儀の後、ナルトたちの相手をした。子供たちはそれぞれに事態の重さを受け止めているようだ。
けれど、カカシは一刻も早くイルカの元へ行きたいと思っていた。

大人として子供たちに語りかけながら、火の意思を伝えながら。
もちろんそれは嘘偽りではなかったけれど。
まるで自分たちに言い聞かせる言葉であるかのように、聴いている者たちの一人一人を慰めていたけれど。

子供たちを急かすように解散したが、上忍同士の会議もあり思いのほか遅くなった。アカデミーの教師たちも会議をしていたようだが、もう終っただろうか。
アカデミーには気配がなかったので、イルカの部屋へ急ぐ。


「イルカ先生?」
声をかけたけれども返事がない。
気配がしたので勝手に上がり込んだ。


家の中は薄暗く、いつもはする筈の暖かい感じがしなかった。
居間へ向かうと卓袱台に向かうイルカの背中があった。何だかとても頼りなく、小さく。

「イルカ先生」

声をかけると微かに肩が揺れた。その身体を後からゆっくりと抱きしめると、緩い鼓動を感じた。

「大丈夫です」

イルカは俺が何も聞かないのにそう言った。

「大丈夫…」

この人は何かを無くす度に自分に言い聞かせてきたのだろう。この言葉がこの人にとっての呪い(まじない)。
自分はその矛先を敵に向けてきたけれど。
この人は自分の理由を人に押し付けたりしない。きっと出来ない。

「こっち向いて」
「泣いてなんかいませんよ」

イルカは腕の中で振り向いて言う。薄らと微笑む顔の、その顔色は悪かったが確かに涙はなかった。

「違うよ。俺ね、イルカ先生を泣かせに来たの」

青白い頬をするすると撫でながら、耳元で囁いた。

「何言ってんですか」

イルカの瞼がぴく、と引き攣る。

「何、馬鹿な事」

その瞼に口付けると、深い吐息が漏れた。

「ふ…ッ」
「俺がいるんだから、大丈夫でも大丈夫じゃなくても、俺がいるから」
「カカシ…せん、せ…」

イルカの腕が弱々しくカカシの腕を掴んだ。
お願いだから俺を求めて。
あなたに求められなければ俺の存在の意味がないでしょう?
あなたにとっての三代目は、親にも等しい唯一残った肉親のようなものだったのでしょう。だけど、その人を失ってあなた一人とりが残されたわけじゃない。


俺がいます。
俺が一緒にいます。



イルカの腕が首にまわされた時、イルカより先に自分が泣きそうだった。




END




(2004.05.08)

私の作品の中では火影様は五代目より三代目率が高いのですが、やはり追悼話は書いておきたかったので。

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